専門分科会代表者
認定分科会代表者 各位
日本歯科医学会
会 長 住友雅人
平素は本学会会務運営に格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、本学会では本年度事業計画において「歯科医療への学術的根拠の提供」を重点的に取り組むべき事業と位置づけ、歯科医学、医術の進歩発達を歯科医療現場に迅速に導入することを目的に、標記プロジェクト研究事業を企画、実施しております。
プロジェクト研究事業は、学術的かつ高度な研究結果を診療報酬改定時の新技術導入のための一助とすることを主眼としております。平成26年度からは、歯科医療を変えるcutting-edge研究、また、平成29年度からは、新たな先進医療への導入に繋がる研究や、基礎的研究の成果を臨床に応用するための橋渡しをするトランスレーショナルリサーチについても公募用テーマの選考対象とすることになりました。
本事業の趣旨をご理解いただき、下記の研究テーマに基づく研究課題をご申請いただきますようお願い申し上げます。
<研究テーマ及び趣旨>
テーマA「歯科界のニューノーマル(各種感染症対策、高齢者の歯科治療体制の確立)」
ニューノーマル(New Normal)とは、社会に大きな変化が起こり、変化が起こる以前とは同じ姿に戻ることができず、新たな常識が定着することを指す。2020年年初から本格的に始まったCOVID-19の感染は瞬く間に世界的大流行となった。
COVID-19の感染拡大に伴い、医療機関はこれまで以上に感染防止対策に取り組んでいるところであるが、これまで通院されていた方、生活様式が大きく変化し不調を来した方が感染リスクを恐れて、医療機関への受診を控えたり、先延ばしするといった現状が顕著である。COVID-19は唾液中にも存在し、この唾液に暴露する機会の多い歯科診療では特段の感染対策を講じ、必要がある。このような状況下、歯科医療を担う私たち医療人にとって、これまでに蓄積したデータを基に、安全かつ安心な歯科医療を提供できるシステム構築が急務である。また、現時点で歯科界では大規模なクラスターが発生していないことが報告されており、歯科界から独自のCOVID-19に対する感染対策を提言をすることは、歯科界全体が総力を上げて取り組むべき重要な課題である。
一方、超高齢社会である我が国において、高齢者に対して訪問診療・摂食嚥下障害およびオーラルフレイルの予防を行うことは、健康長寿を実現させるためには極めて重要なことである。今後ますます進行するであろう超高齢社会において、さらに適切な医療を提供すること、また、それに加えて得られる副次的効果としての医療費削減を目指すことは、我々が取り組むべき重要な課題である。
本プロジェクトでは、これから求められる歯科界のニューノーマル(新たな常識)を想定したCOVID-19をはじめとする各種感染症対策、及び高齢者に対する歯科治療体制確立を中心課題とした研究を公募する。
テーマB「これからの歯科医療のDX(AI・デジタルテクノロジーの応用)」
DX(Digital Transformation、デジタルトランスフォーメーション)は、2018年に経済産業省が、有識者による「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置した以降、急速に拡がった用語であり、その注目度は拡大している。
DXの意味は、デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすものとされている。また、経済産業省が平成30年に発表した「DX推進ガイドラインVer.1.0」では、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することと定義している。
現在、歯科の多くの分野でデジタル化が進んでいるが、遠隔診療、診断におけるAI導入、診療・教育におけるVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)の導入等で、患者・社会のニーズの意識変化とともに、歯科医療の提供サービス、ビジネスモデルの変革、即ち、業界文化の変革が期待される。さらに、歯科医学界へのAIやデジタルテクノロジーの導入は、提供する歯科医療の改善のみならず、医療費の削減にも影響するので、歯科医学界にも極めて重要な課題である。
本プロジェクトでは、前述のDXの概念に基づいた歯科医療のDXにつながる、AI導入、デジタルテクノロジーの開発・応用等、これらに関係する幅広い研究を公募する。
テーマC「New for Old、疾病構造の変化を見据えた歯科ストックの確保を目指して」
昨今、歯科医療における疾病構造の変化は目覚ましいものがある。また、それを取り巻く歯科医療環境も大きく変化している。また、歯科点数表においても、検査、画像診断、処置、手術、麻酔、歯冠修復及び欠損補綴等で、現状に不一致な項目や算定頻度の低い項目は削除されるようになった。
「削る」、「詰める」、「被せる」に代表された歯科治療は、硬組織疾患に対するものであるが、前述のように疾病構造の変化にともない、今が正しく、大きな変曲点を迎えており、歯科医療に対する現在のニーズに合致した新たな価値観で、さまざまな検査や治療法を導入すべき時期に直面している。
本プロジェクトでは、既存検査の再考、保険収載に向けた新しい各種治療、多様化する歯科治療に対する新規検査、また、ますます進む超高齢社会における高齢患者および有病者の歯科治療体系構築について、比較的早期に具現化可能と思われるもの、先を見越した長期的に視野に立ったものについて、大局的なものから近視眼的ものまで幅広い研究を公募する。
<研究期間>
令和3年7月1日より令和5年3月31日
<研究費用>
総額 2,000万円以内(計2年度・3テーマの合計)
<申請書及び各種報告書様式等>
・令和3年度プロジェクト研究テーマ及び趣旨.pdf
・プロジェクト研究費申請書様式.doc
・中間報告書様式.doc
・総括成果報告書様式.doc
・収支報告書様式.doc
・日本歯科医学会COI自己申告書(和文または英文).doc
・配偶者、一親等内の親族、または収入・財産を共有する者の申告書(和文または英文).doc
<その他>
詳細な応募方法等については、令和3年度プロジェクト研究費応募要領.pdfをご参照ください。