日本歯科医学会について/ご挨拶
学会長ご挨拶 4・5月号

春眠暁を覚えず
春眠不覚暁
処処聞啼鳥
夜来風雨声
花落知多少(春暁 孟浩然)
唐の時代に生きた孟浩然と1300年の時を隔てていても、同じ艶麗な春を感じる4月初旬となりました。毎年、緋寒桜から八重紅枝垂桜まで次々に咲いては散るのを楽しんできましたが、今年はどの桜も一気に開花したようです。かつて入学式で新入生を迎えた桜の花も今や卒業や別れを象徴する花になってきたのは、地球温暖化の影響でしょうか。桜の木は韓国が発祥と韓国で報道されているようですが、発祥がどこの国かの議論はさておき、それを大切に育てて文化とすることは素晴らしいとおもいます。
さて新年度が始まりましたが、事業年度が7月、会計年度が4月という組織の御多分に洩れず、日本歯科医学会もそのようになっています。おかげさまで2月の選挙で会長続投が承認されましたので、私としてはいわゆるシームレスな運営ができます。役員任期は6月いっぱいですが、現在の事業の推進と並行して、7月からの事業計画に基づいた企画を立てていくことになります。会計は新年度予算なので、現在の事業をどのように推進するかに配慮が必要ですね。組織の継続性は重要です。トップが変わり、多くの役員に変更があるところはその引継ぎに苦慮することもあるでしょう。各分科会も新しい役員体制での新企画とこれまでの展開を継続させていくものがうまく収まることを願っています。
学会は各員会からの答申が順調になされてきており、その答申に基づいた具体的な動きに入っています。重点研究委員会からの企画、「公開フォーラム 口から食育を考える―歯科における子どもの食の問題―」を平成27年5月31日に開催します。また、6月13日には会員向けに「PMDAとの連携を基に臨床研究項目の薬事承認をめざすための研修会」を執行部で企画しました。リサーチ・デザインの段階から始めるPMDAへの相談、伴走コンサルタントとしての協力要請など、その研究成果が薬事承認を得て医療現場に導入される道筋を学ぶ研修会です。多くのみなさまの参加を期待しています。
私は実母と同居していますが、母は食事のときにむせたり、飲み込み困難な状況がみられます。よく観察していて理解できました。自室でTVを見ていた後にすぐに食事に入るとその症状はみられます。すなわち口をほとんど動かさないで食事を開始するとその症状が起きやすいということです。食事にも準備運動が必要です。まずおしゃべりしてから始めればよいのですが、一人で食事をとることもあるので常にできるものではありません。すでに世に広く提案され、実践もされていますが、本、新聞などを大きな声を出して読むことです。とりわけ、一人暮らしの高齢者の摂食・咀嚼・嚥下障害を予防、改善する方法としてはよい方法です。大きな声を出して、口腔周辺の筋肉を動かすことが食事の準備運動になります。それ以上に効果があるのは会話です。相手の話を理解する、それに対する答えを準備するなどが前頭前野の働きを活性化させますので、認知症の予防にもなります。よくしゃべり、よく食べることは老化防止の基本です。もちろん歩くなどの全身を動かすことが重要であることはいうまでもありません。
さあ、花粉症の方にはつらい時期ではありますが、春眠不覚暁などと言っていないで、布団から離れて春の朝の空気を吸いに出かけようではありませんか。
2015年04月08日