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日本歯科医学会について/ご挨拶

学会長ご挨拶 師走号

住友 雅人:写真画像

年を越すということ

 
 車窓を開けると、ビッグ・ベンの鐘が鳴っている。1980年12月31日深夜24時。1981年の幕開けを、私はウエストミンスターブリッジの上で聞いていた。なぜって、その日私はテムズ川の北に住むイタリア人の友だちから、ニューイヤーズパーティーに招かれていて、家族とともに車で出かけたまではよかったが、あいにく橋の上で交通渋滞に巻き込まれ、立ち往生していたのだ。渋滞の先は橋のたもと、バスや車が広場で止まってしまっている。バスの運転手は窓を開けてにこやかに微笑んでいる。ハッピーニューイヤー!と言いながら若い女の子たちが運転手にキスをして回っている。私は大急ぎで窓を全開にした。にこやかな顔の私には何事も起こらず、ただ隣に座っている家内にみっともないと叱られただけだった。冗談の通じない人だ。キスは、大晦日から元旦にかけて公共のために働いている人たちへの感謝の気持ちの表現らしい。今でもそうなのだろうかとたまに思い返す、それは楽しい新年の幕開けだった。
 世界中誰にも新年はやってくる。宗教や社会環境や人間関係のいかんを問わず、地球上のすべての命にやってくる。昨日までの一年をさまざまな思いを込めて見送り、そして新しい一年を迎えるというその厳粛な一瞬を、人は誰と何処でどのように迎えるのだろう。年越しそばをいただき、窓を開けて除夜の鐘を聴き、外は寒いぞなどといいながらベッドに潜り込んで元旦を迎え、とにかく健康で新しい年が迎えられることが一番と思う今の私は、実は世界の人から見れば大変に幸せなのかもしれない。もちろん、明日が必ず来るとは限らない。だから鐘を鳴らして祈り、新しい年の訪れに感謝し歓声を上げて喜ぶいとなみの波が世界をめぐるのだろうか。
 12月31日23時60分から1月1日0時0分までのほんの一瞬の間に世界中の人を思う、そういう時を過ごす人間でありたいと願うこの頃、結局私は、歳を重ねたのだろう。一つ重ねるごとに一つ経験を積む、まるで重ね餅のようだな。
 さてさて今年の「ご挨拶」はこれでおしまい。みなさまも、それぞれにどうぞよいお年をお迎えください。また新年号でお会いしましょう。

2016年12月 1日


 
 
 

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