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住友 雅人:写真画像

2025年、日本への万博誘致の実に単純な目標設定による勝利に学ぶ


 2025年の国際博覧会(万博)が大阪・関西で開催されることを当然の決定と受け取られた方、どれくらいいるだろうか? 今はなんといっても2年後に迫った2020年の東京オリンピック・パラリンピックに目がいきがちで、万博の誘致活動にまで興味をもって見守る余裕がないようであったと思う。とくに今年の6月18日に発生した大阪府北部地震、9月4日の21号を代表とした台風被害、さらに長期にわたる関西国際空港の閉鎖などから、開催地として立候補したのは知っていても「大阪開催」の目はないと思っていた方も多いのではないだろうか。しかし結果はみなさんご存知の通り、決選投票でロシアを破り、決定した。2008年の夏季オリンピックに立候補した時は最下位に終わった大阪でなぜ万博誘致が成功したかを考えてみると、大阪を代表とする関西が持つこの種のイベントへの適正力と、それゆえにオリンピックとは力の入れ方がちがっていたのが見えてくる。私は四国徳島の出身なので、関西人の発想が理屈ではなく感性で理解できる。というかできると思っている。まず今回は跡地活用の構想が明確で、商業都市に適合した統合型リゾート(IR)計画が予定されている。またそのテーマは最終的に「いのち輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)」となったが、実は、最初に大阪府が提案したのは「人類の健康・長寿への挑戦」であった。2025年問題といわれる、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者(75歳以上)になり医療・介護への対応が大きな課題となる時代に当たることを如実に物語るテーマであったものを、最終的には一段と幅を持たせたものに変えたのだ。今回の博覧会国際事務局総会用の誘致活動プロモーションビデオをご覧に頂きたい(YouTube)。京都、奈良などの歴史的観光地はさらっと紹介するにとどめ、重点ポイントを次の三つに絞っている。まず一つ目は超先進科学技術(山中伸弥先生も登場する)、そして、二つ目として食の都市を強調、それも庶民的な食べ物をこれでもかという感じで紹介し、三つ目に「元気で楽しく生きよう」と若者が踊りまくるシーンの連続である。全世界のいわゆる大衆を意識した内容に感心してしまう。私の前職の大学はイスラエルのヘブライ大学歯学部と姉妹校ということもあり、私自身イスラエルへは3回ほど訪問している。現地で、歯学部の教員と彼の知人のビジネスマンとで食事会をした時の話である。私が「ユダヤ人ほどビジネスに長けた人種はいませんね」と話しかけると彼は「いやいや世界にはユダヤ人どころではないすごいビジネスをする人たちがいますよ」と返してきた。えーっ?と思わず「どんな人種ですか?」と尋ねたら、即座に「OSAKA-AKINDO」と返ってきた。なるほどビジネスの世界では、大阪商人の商売センスが高く価されているのだなと改めて納得した次第だ。そのことを知っている私は、万博誘致に精を出した多くの関西人の努力結果を楽しみにして、結果発表されるまでTVに食い入ってみていた。決定した時に飛び上がった面々を見て、「TOKYO」と発表された2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックの場面との違いに強い感動を覚えた。その渋い、いかにもしぶとそうな顔に満足そうに浮かんでいたのは「関西商人のド根性」そのもの。いよっ、さすが大阪あきんどやで!
 さて、長い前置きになったが、私がこの万博にこだわるわけを話そう。
 まず現在、学会は来年の創設70年を記念して歯科イノベーションロードマップを作成し世に発出する準備にかかっている。このことはすでに今年の6・7月号でお知らせした。スタートラインのテーマとして26分科会から151いただいた。これを整理してあらかじめ設定したマイルストーンにおいていく。高齢者の人口が最も多くなる2040年を目標にして、その時代に健康でいられるための医療の枠組みの中で歯科から積極的に支援する計画を立て、実行するためのマップ作りである。しかし、2025年に日本で万博が開催されるとなるとイノベーションはより急進性を増すことは目に見えている。医療、食、元気なコミュ―ケーションづくりがテーマであり、同じテーマでイノベーションを推進しようとしているわれわれにはもっと革新的な展開が必要になる。万博の影響力は計り知れず、この流れに乗ることは歯科界にとって活性化の大きな原動力となる。また逆に2021年に開催される第24回日本歯科医学会学術大会で歯科からのイノベーションを強く発信し、2025年大阪万博を推進する力にもなりたい。 2040年問題はとかく悲壮感をもってとらえられがちだ。これからは2025年万博にも注目し、未来の歯科界の方向性をリンクさせて、これを健康的な展開にかえようではないか。

2018年 12月 4日


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