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日本歯科医学会について/ご挨拶

学会長ご挨拶 令和元年9・10月号

住友 雅人:写真画像

第一話:「8020」と「8050」の意外な接点

 「8050問題」は「50代中高年のひきこもりの子を、80代後期高齢者の親が面倒見る」といういわゆる“社会問題”です。

 「8020」は「80歳まで20本の歯を維持しよう」という“目標”です。

 2010年代以降の日本に発生している引きこもりの長期化、そうした子をもつ家庭の高齢化は大きな社会問題ではありましょうが、一人の人間が社会とどうかかわりながら生きていくのかは、個人の基本的な権利です。他人がとやかく言うものではありません。しかし、それを理解しながらも、そこに、救いの求めに応じた支援の可能性を常に広げて示しておくことが、成熟した社会には不可欠なのです。

 一方で、最近、複数の小児歯科専門医から、登校拒否児は学校に行きたがらないが歯科診療所には積極的に来るという話を伺いました。保護者が子供を連れて相談に行くような専門の「相談所」「病院」とは違うと、子どもが自主的に判断している可能性があります。

 これらの話には共通するポイントがあります。一人一人の生活に深くかかわる歯科医療の存在です。歯科医療は、歯科疾患や全身疾患の情報把握とその治療を行うのは自明の理です。その目標は「8020運動を推進した健康寿命の延伸」です。しかしながら、歯科医療を始めるときに行う医療面接では、患者さんご本人の社会的あるいは家庭的背景に、なにか不安や問題があることを察知することも可能なのです。もちろん、ご本人の広角で深淵な生活環境とどのように向き合えばよいのか、基本的人権と個人情報の管理に気遣うことを大前提としても、歯科医療を入り口として、一人ひとりの求めに応じた社会的支援につなげられる可能性があるのです。そのためには、歯科医療に携わる方々の学習、研修の領域や習得レベルを上げたり、多くの多分野および他分野を巻き込んだり、大変難しいことでしょうが、このところをきちんと議論し、「8020」に語源を発したと思われる「8050」への対応に、より積極的に取り組みたいものです。

第二話:東京オリンピック・パラリンピックにつぶやくミクロな話

 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催までに一年を切りました。それにしても「東京2020(にいゼロ にいゼロ)」と呼ぶのは気になるところです。国内では「にいれい にいれい」とか8020風に言えば「にいまる にいまる」でしょうね。ま、今さらといわれそうですし、「ZERO(ゼロ)」も、今日、日本語になった外来語と理解すればよいでしょうね。

 それはさておき、東京都内および周辺では各方面でいろいろな試みが行われています。暑さ対策、輸送対策、テロ対策などなど、やってみて初めて分かる課題もたくさん出てきているようです。関係者にとって、この一年はあっという間に過ぎることでしょう。

 開催時期は、酷暑と予想できますが、それゆえに室内外でいかに涼しく快適に過ごせるかの工夫が、建築、建設、衣料、食品などあらゆる分野で研究されています。さらに日本では多くの学校が夏休みを迎え、かつ世界中の方々もロングサマーバケーションをとることから、非常に多くの来場者が期待できます。少しでも余裕のある輸送に向けた対策もなされます。テロについてはいわずもがなのこと、確固とした安全策に具体的な緊張感が加わることでしょう。

 東京オリンピック・パラリンピックは多くの人的経済的負担を伴いますが、それはもちろん、開催後に活かされるべくしてなされています。大きなイノベーションのチャンスです。予測を立てて対策を施し、実践から得られるデータを蓄積することは、歯科医療の分野でも、常日頃から申し上げていることではありますが、これほどの短期間に膨大な規模で実施されるチャンスはめったにありません。

 私はテレビの前で観戦する予定ですが、自分にとってのイノベーションにもつなげていきたいと思っています。急にミクロな話になります。たとえばテレビを買い替えようか、高機能の衣料品でも買って着てみるか、ぐっと冷やしたビールを飲みながらがいいか、いやワインでまったりして観るか、競技者に元気をもらってもうひと頑張りしてみるか、とか。それの何がイノベーションなの?といわれると困るのですがね。いやいや、大きな催しの後に得られるものを見つめることが、きっと素敵な老後につながるに違いない。ではなくて、日本のさらなる発展につながるものと信じております。


令和元年 8月27日



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