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学会長ご挨拶 6月号

住友 雅人:写真画像

「しばし息抜き
   -デバイス パーツの温故知新-」


 真空管をご存じでしょうか?
 私たちの世代、いわゆる昭和世代はご存じの方も多いと思います。最近、レコードの再評価で異様な形をして光を出す真空管アンプが若者たちの間で「クール」の仲間入りしているとも聞こえてきます。大学の工学部で、なんと三極管の構造と動作の講義がされたとの話題もありました。
 真空管の歴史では、1904年に英国人のフレミングが初めて2極管を試作したと言われています。現在はマニアックな存在であるとはいえ、一世紀以上にわたって愛用されているのです。半導体チップの時代に何をいまさらといわれますが、この半導体技術のピークは誰もご覧になっていないでしょう。まだ開発途上にあるからです。一方、真空管は20世紀に技術のピークを示しました。われわれはデバイスのパーツである真空管の最高性能を見たのです。そのことが分かっていると、自作するには安心感のあるパーツです。これまでの経験を製作物の性能評価にすることは容易です。出来上がった製作物は好みもありますが、インスタ映えもします。製作者にとっては手がかかるが、大切な子どものような存在となります。
 真空管にも寿命はあります。主に何らかの機械的、化学的な理由が存在します。長く使っていると内部の電極間の放射力が減少して性能が低下してきます。新品には使用耐久時間も一応決められていて交換の目安になります。そして使用不能の原因の多くはフィラメント(ヒーター)の断線です。これは交換しか手はありません。たまに中の電極のタッチという使用不能のトラブルもあります。ICチップのトラブルではトラブル個所を特定せずに、基板ごと入れ替えるという修理方法が主です。真空管の器械では一般的にはまず真空管を交換することから始めます。
 使用不能の真空管は「死んだ」といわれます。世の中には「死んだ」とされた真空管の姿を美しいとする連中がいます。私もその一人です。虎は死して皮を残しますが、真空管は死してもクールな姿を残します。私は多くの飾り用の真空管を段ボール箱に入れて大切に保管していました。愛好者にお譲りしたこともあって80本程度に減りました。それに加えて、自作のオーディオ装置や無線設備用のスペアの真空管も段ボール箱で保管していました。狭い部屋で段ボール箱に囲まれた道楽暮らしの有様でした。このままでは死蔵になると思い、真空管の納骨堂ともいえる、「ミニ」博物館に仕上げました。生きているスペアの真空管も常に使用できるようにガラスケースに元箱入りの状態で並べました。箱入り娘(!)ですが誕生は1940年より前です。「ミニ」博物館はこれで終わりでなく、それぞれの展示品の名前や年代、そして最も肝心なことは地震対策です。現在の状態よりもさらに倍ぐらいの安全性を確保するアイディアが浮かんでいます。
 母親が毎朝拝んでいた住友家を細々と祀るお仏壇の隣に、100年近くの間に命を落とした、またはまだ健在な真空管の供養・介護ケースが仲間入りしました。愛おしいものです。
 実は真空管を温故することは新しいデバイスを創生するヒントになります。真空管が必要とされ開発を目指した発想は今も変わらないのです。「研究テーマや開発テーマが見つからない」という若者に伝えていますが、テーマは同じでよいのです。その時代のものを適応し、展開すればそこに創造が起こるのです。まさに温故知新での逆転の発想です。

真空管:写真画像


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令和 5年 6月12日



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