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日本歯科医学会について/ご挨拶

学会長ご挨拶 9月号

住友 雅人:写真画像

「そうめんとうどんと平和な狸寝入り」


 2022年2月号に掲載した狸の話は、近隣のほんの小さなできごとを綴ったにもかかわらず、多くの方に興味を持っていただきました。書き手にとってそれがどんなに嬉しいことか、この十年余り、身をもって学んできました。さて、柳の下に二匹目のどじょうを狙うわけではありませんが、最終章のタイトルを「そうめんとうどんと平和な狸寝入り」としました。狸話を知らないご向きには、是非とも2022年2月号をお読みいただいてから、次を読み続けていただきたい。
 さて、この狸の後日談を2023年4月号に書いています。狸が出没していた場所に不法投棄が行われたために、この土地を所有している公共事業者が、しっかりした金属網ゲートを設置したのです。結果、それまで誰でも自由に出入りできていた眺望のきく丘への入り口が塞がったばかりか、狸までもが一切姿を見せなくなりました。狸にとっては、夜目にも冷たい銀色のゲートが捕獲ケージに見えたのかもしれません。不法投棄は止みましたが、同時に狸の姿も無くなりました。
 私の故郷の徳島には、狸にまつわる民話がたくさんあります。赤岩だぬきと呼ばれたボス狸や、映画にもなった阿波の金長狸など、子ども心にも面白おかしい、よくできた話です。隣の香川県、讃岐の狸とはライバル関係にあり、華やかな狸合戦もあったようで。
 香川と徳島の合戦は、今ではうどんとそうめんに代わったようにみえます。讃岐うどんは全国的に知られ、香川県はうどん県とも称されていますが、徳島県のそうめんは、知る人ぞ知るというところでしょうか。強いていえば、県西部の半田そうめんが静かな人気を呼んでいます。これは冬場の厳しい寒さと吉野川のきれいな水を利用した、とても太い手延べそうめんです。かつての半田町(はんだちょう)で製造されたのでこの名で親しまれて来ましたが、現在は美馬郡に属し、つるぎ町半田となっています。阿波半田駅は、高校野球で有名な阿波池田駅から徳島駅寄りに6つ目です。ちなみに私の生まれ故郷の駅は阿波半田駅からさらに徳島駅寄り5つ目にあります。
 
 話はころりと変わりますが、最近は木箱でスピーカーを作ることに熱中しています。スピーカー作りは以前から好きで、大小さまざまなものを自作してきました。面白いスピーカーユニットが先に手に入る時もあれば、気に入った箱を見つけてからユニットを探すこともあります。最近は、旧東ドイツのスピーカーユニットに凝っています。これらはドイツが東西に分かれた時のものが多く、東ドイツでは国営工場で作られて主にラジオに組み込まれていました。それらが解体され、ユニットだけで中古品として販売されるのです。このスピーカーからは、ベルリンの壁崩壊のラジオニュースも流れ、人々が固唾をのんで聞き入ったのでは?と勝手な想像も膨らみます。ある時、面白い形のユニットがオークションに出品されました。普通、スピーカーユニットは円形か楕円形ですが、今回見つけたものは、ボイスコイルが端っこの方に寄っている変わった楕円形でした(写真でご覧ください)。タイミングよく、お中元でいつもの木箱入りの半田そうめんが届きました。本物の木箱は今どき珍しく、これまでは部品箱として重宝していましたが、今回はピンときました。早速、ドリルで小さな穴を連続して開け、その間を歯科用のハサミで切り、最終的にヤスリできれいな楕円形に仕上げます。実に効率の悪い作業ですが、穴開け専用カッターを持ち合わせていない私の、昔からの手法です。木箱にニスを塗り、乾くのを待つのも楽しい時間。
 さて、ユニットを取り付け、リード線を、半田付けして、アンプにつないで音出しを試しますと、これまでのものよりも若干細めの音質でした。早速、次のアイデアが頭に浮かびます。播州そうめんのような細麺の木箱が手に入れば、より繊細な音が出るかもしれない!ライバルの讃岐うどんの木箱も試すべきか?と、楽しみは続きますが、残念、学会長ご挨拶はこれにて終了。10年間余、81回にわたり、そうめんやうどんのような長いお付き合いに感謝して最終版といたします。
 半田そうめん箱のスピーカーからはエヴァ・キャシディの唄声が部屋いっぱいに広がり、阿波だぬきも讃岐だぬきもどこかに飛んで行く、平和な休日の昼寝であります。
                                 【完】

半田そうめんスピーカーボックス:写真画像

写真1 半田そうめんスピーカーボックス

さまざまな自作のスピーカー(ワイン木箱、フルーツ木箱、そうめん木箱を利用):写真画像

写真2 さまざまな自作のスピーカー

(ワイン木箱、フルーツ木箱、そうめん木箱を利用)

※画像をクリックすると別ウインドウで拡大表示されます。

 

令和 5年 8月27日



最終のご挨拶


 2013年7月に日本歯科医学会会長に就任して以来、10年以上続けてきた「学会長ご挨拶」は学会ホームページの大幅な刷新により、今回をもって終了する。本来の「学会長ご挨拶」は、他のさまざまな歯科団体や組織と同じ趣旨で、新会長や新理事長就任の挨拶であり、退任するまで掲載し続けるものであった。就任時の意気込みをそこから伝えることはできるが、事業を推進していくにつれて、当初の想いとは違うさまざまな状況が出てくることもある。それをタイムリーに会員に伝えることも必要であると考え、これまで原則、2か月に一度更新してきた。
 日本歯科医学会は法人格を有していない組織であるところから、ここでは会員目線よりも国民目線に重きを置いて、できるだけわかりやすく、馴染みやすい情報を発信する場として続けてきたのである。学会のHPは、会員に限らず、どなたでもアクセスできるものであり、多くの歯科の学会事業を国民に知っていただく入り口としても活用していただいた。その中にあって「学会長ご挨拶」はおそらく異端な存在であったと思う。いわば、学会会長のブログ的発信の場としていたのである。どれほどの方にアクセスしていただいたかはわからないが、たまに、「今回の内容は楽しめた」などのご意見をいただくとうれしいもので、特に歯科関係者ではない方からの感想は、本来、期待していた目的でもあり、元気が出るものであった。
 しかし10年も続けていると自分自身の中にもマンネリ感が芽生えていることに気づく。ワクワクして読んでいただける内容の発信が難しくなったと考えれば、HP一新を機に終了しておくのが適当である。
 この9月号をもってこのスタイルの「学会長ご挨拶」は終わりになる。10年以上の長きにわたり、お付き合いいただいたことに心から感謝する。

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